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画像診断科

お腹の画像検査を受けるときの注意点

こんにちは。画像診断科を担当しております獣医師の勝山です。

今回は、お腹の画像検査を受ける際の注意点をお話したいと思います。

人でも健康診断や精密検査などの検査を受けるときは絶食を指示されることがあると思いますが、動物でも同じように絶食が必要な場合があります。

左の画像は食後のわんちゃん、右の画像は絶食をしたわんちゃんのお腹の超音波画像です。

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左の画像は、食後のため胃の中にごはんやガスなどの内容物がみられます。これにより、全体の胃壁の状態が見えにくくなっています。

右の画像は、絶食のため胃の中が空っぽであり、胃の状態がよくみえます。胃の入口にできものができているのがわかります。

この2つの画像は、実は両方とも同じわんちゃんの画像です。食後に検査をすると、病変があるのにごはんがじゃまで見えないということがわかります。

この画像は胃の入口の病変ですが、胃にごはんがたくさんあると、胃の周りにある臓器(肝臓や膵臓など)や血管、リンパ節などの観察も難しくなってしまいます。また、下痢や嘔吐など、消化器症状がある場合に、胃の他、腸の状態も食後の変化により観察や正確な評価が難しくなってしまいます。
 

このように、食後に検査をすると、観察したいところがみえないことがあり、再検査が必要になることがあります。

しっかりとした診断をするために絶食でご来院ください。

また、お腹の画像検査以外の検査(血液検査、麻酔をかける検査など)でも絶食が必要になることがありますので、もし絶食した方がいいかわからなければ病院スタッフにお尋ねください。

 

CT検査時の全身麻酔の重要性について

こんにちは。

画像診断科の杉野です。

今回は、CT検査時の全身麻酔の重要性についてお伝えしたいと思います。

動物の場合、CT検査を行う際には基本的に麻酔をかけて行います。

飼い主様の中には、なぜ麻酔が必要なのか疑問に感じる方もいらっしゃるかと思います。

その理由は、検査中に動物が動かないようにするためです。

動物はこちらの指示に従って体を動かさないようにしたり、呼吸を止めたりすることはできません。

レントゲン撮影時には、獣医師や看護師が動物を保定して動かないようにすることができますが、CT撮影中は被曝の観点からCT室内に入ることができず、動物の動きを制御できません。

また、CT検査では呼吸のようなわずかな動きであっても画像の品質に悪影響を与えます。

実際に検査中に動いてしまった場合、どれほどの影響が出るのか紹介したいと思います。

呼吸による動きがある状態で撮影された画像(図1)と、完全に不動化された状態で撮影された画像(図2)を比べてみてみましょう。

 

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(図1)

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(図2)

 

図1では画像がブレてしまい、臓器や血管、骨などの正確な評価ができません。

それに対して図2では鮮明な画像が得られています。

当然ながら、図1のような画像では適切な診断を下すことはできません。

全身麻酔には怖いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、現代の麻酔は麻酔薬や麻酔器、モニター機器の進歩により非常に安全なものになりました。

しかし、全ての動物にとって完全に安全というわけではありません。

麻酔には一定のリスクが伴い、非常に少ないながらも合併症が発生する可能性もあります。

それでも麻酔をかけるのは、適切な診断を下し、適切な治療につなげるためです。

皆様の大切なご家族の一員であるワンちゃんや猫ちゃんに麻酔をかけることは心配かと思いますが、当院ではCT検査に限らず麻酔処置の前に入念な検査を行い、安全に麻酔をかけられる状態かをしっかりと判断します。

そして、いざ麻酔をかける際には万全の状態で処置を行いますのでご安心ください。

 

また、当院では正確な診断を行うために高いクオリティで撮影を行うことに尽力しています。

診断に必要な画像を撮影するために、ポジショニングや造影剤の投与量、撮影のタイミングなど様々なことを考慮して検査を実施しています。

動物を不動化させることはもちろん、これらの条件が少し違うだけで得られる画像が全く異なることがあり、病変を見落としたり誤診することにもつながる恐れがあります。

当院の画像診断科では日々高いクオリティで検査を行い、適切な診断を下せるよう努めています。

 

 

レントゲン検査のポジショニングの重要性

こんにちは

画像診断科の石川です。

今回はレントゲン検査のポジショニングの重要性に関してお伝えしたいと思います。

突然ですが、動物はどのようにレントゲンを撮影しているのでしょうか?

当然ながら動物のレントゲン撮影では人の場合とは異なり、こちらの指示に従って寝転がったり、手足を伸ばしてくれたりはしません。

獣医師や動物看護師が適切に“保定”を行い、撮影を実施します。

保定とは力ずくで押さえ込むのではなく、動物の身体の構造、特性などを理解し、動物ヘの負担を最小限にしつつ、動きを制御できるように押さえることを指します。

動物病院では採血や体温測定などの際によく見かけるかもしれません。

X線撮影ではこの保定に加え“ポジショニング”が非常に重要になります。

これは簡単に説明するのであれば、診断のために必要な画像を撮影するために、適切な角度で、適切な引っ張り具合で撮影する、その保定の微調整のことを指します。

実際の撮影では左右対称になるように真っ直ぐ撮影する、息を最大限に吸ったときに撮影する、適切な角度に足を曲げて撮影するなど、撮影目的に応じて様々な工夫を行います。

ポジショニングが悪い画像では病変を見落としたり、誤診することに繋がるため、撮影ポジショニングの精度=診断精度といっても過言ではありません。

また、時間をかけてゆっくり丁寧に撮影することは誰にでもできますが、これでは動物の負担が増えたり、状態が悪い動物の検査では検査中に急変してしまうことに繋がりかねません。我々画像診断医は常にクオリティの高い画像を撮影できるよう日々鍛錬しており、早く、丁寧に、正確な画像撮影・診断を提供できるよう努めています。

実際にポジショニングひとつでどのような違いが見られるのか紹介したいと思います。

ガーガーとひどいいびきで呼吸が苦しい犬の喉のレントゲン画像についてみてみましょう。

このような症状は上気道(鼻や喉)の閉塞(肥満、腫瘍、喉頭麻痺、異物)、炎症など様々な原因で見られるため、鼻から喉の領域にかけて空気の流れを妨げるものがないか確認することがレントゲン撮影の目的となります。

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図1a

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図1b

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図2a

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図2b

 

図1は適切なポジショニングで撮影された画像で、図2は少しローテーションを生じている(頭頚部が少しねじれている)不適切な画像です。

これらはどちらも同じ犬の画像になります。

図1では鼻咽頭道がキレイに見えており(黄色斜線)、空気の通り道に狭窄や閉塞物はないと判断できますが、図2ではこの領域に顎の骨や歯が重なっており、内部の構造がよく観察できません。

また咽頭喉頭部〜喉頭領域にはなにか構造物(緑色)があるように見えてしまいます。

これはポジショニングが悪く、左右対称である構造がずれて、変に重なり合うことでそのように見えているのです。

この画像の違いは、頭と首のねじれが原因ですが、実際には頭の角度はわずか10°程度ずれるだけでこれほど大きな違いになってしまいます。

いかがでしょうか?

当院にご紹介でご来院された際にはX線画像のデータをお持ちであっても再度検査させていただくことがほとんどです。

なかには「かかりつけの動物病院でX線の撮影をして、データも持ってきたのにまた撮影するの?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

・かかりつけ医受診時と病変に進行がないか確認する

・正確な診断を行うためにより高いクオリティでの撮影を行う                                                                                                                  

このような理由から再検査をさせて頂いております。

またこのような撮影技術面だけでなく、機器の性能も非常に重要です。

当院では昨年、X線診断装置を最新のものに入れ替え、より高画質で繊細な画像が得られるようにもなりました。

高品質な機器と磨き上げた技術で病気の早期発見、適切な診断にこれからも尽力してまいります。

『心タンポナーデ』について

こんにちは。

画像診断科を担当しております獣医師の勝山です。

今回は『心タンポナーデ』についてお話したいと思います。

『心タンポナーデ』という言葉は、あまり聞き慣れない言葉だと思います。

まずは心臓の機能や構造について簡単にお話したほうがわかりやすいと思います。

心臓は皆様ご存知の通り、血液のポンプの役割をしており、全身からかえってきた血液を肺に送り、肺できれいになった血液を全身に送っています。

そして、心臓は心膜という膜で覆われているのですが、心臓と心膜の間にたまる水のことを心嚢水(心膜水)といいます。

かつ1

【正常な心臓】

かつ2

【心タンポナーデ】

心嚢水は心臓を動きやすくしたり心臓を守ったりする役割があり、正常でも微量にありますが、なんらかの原因により増えてくることがあります。

『心タンポナーデ』は、この心嚢水がたくさんたまってしまうことによって心臓がつぶれてしまい、心臓のポンプの役割ができなくなった状態のことを言います。

心臓のポンプ機能がうまく働かないと、全身にうまく血液を送れないため低血圧になり、突然倒れる、動きが悪くなる、呼吸が苦しいなどの症状が出ます。

原因はいくつかありますが、心臓にできた腫瘍からの出血で起こることが多いです。

心タンポナーデになっている場合には速やかに心嚢水を抜いて心臓のポンプ機能を復活させないと命にかかわります。

このような症状が出た場合には緊急でご来院いただき、すぐに検査や処置をする必要があります。

ご来院後、すぐに身体検査や血圧測定などを行います。

また、同じ症状で他の病気(お腹のできものの破裂など)があることもあるので、画像検査を行って原因を特定します。

心タンポナーデになっている場合には超音波で確認しながら針を刺して心嚢水を抜きます。

 

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【正常な犬の胸部X線画像】

 

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【心タンポナーデの犬の胸部X線画像】

正常と比べると心臓がかなり大きくなっています

 

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【正常な犬の心臓超音波画像】

 

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【心タンポナーデの犬の心臓超音波画像】

心嚢水がたくさんたまっているため、心臓がつぶれて膨らむことができません

 

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【心嚢水抜去後の心臓超音波画像】

心嚢水を少し抜くと、心臓が少し膨らむ余裕ができました

『心タンポナーデ』は命にかかわる状態であるため、上記のような症状が見られた場合にはすぐにご連絡ください。

 

 

 

CT検査の能力を引き立てる3D処理

皆様こんにちは。

画像診断科の杉野悠です。

画像診断科では、日々様々な画像診断装置を使用して検査を行っています。

中でも、CT検査は、従来のX線検査や超音波検査では見えにくい細部まで、高い解像度で観察することが可能な非常に有用な検査です。

CT検査は、体内の臓器や血管、骨などを詳細に調べることができ、病変の探索や診断、術前計画において広く活用されています。

しかし、CT検査の結果を理解するのは、専門的な知識や経験が必要な場合もあり、飼い主様にとっては少し難しいことがあるかと思います。

そこで当院ではCTの3D処理を導入しています。

この処理により、CT検査で得られた輪切りの画像を立体的に表示することができます。

具体的には、白黒の2D画像から立体的なイメージを生成し、病変部を色で強調したり、必要のない臓器を透明にしたりすることで、視覚的に分かりやすい画像を表示することが可能です。

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この3D処理により、異常部位の位置や広がりを視覚的にとらえることができるため、飼い主様にとって病変の理解がより容易になると思われます。

さらに、外科医の手術プランニングにも非常に役立ちます。

立体的な画像を通じて、手術に必要なアプローチや手順をより綿密に計画することができるのです。

このように、CTの3D処理は飼い主様へのご説明のみならず、外科手術における精度と安全性を向上させる重要なツールとなっています。

今回はCT検査の能力を引き立てる3D処理について簡単にご紹介させていただきました。

私たち画像診断医は患者さんを直接診察することはありませんが、患者さんの病態を判断し適切な診断を下せるように、様々な技術や知識を学びながら、高品質な医療を提供することを目指しています。

今後も私たちは技術の進歩に対応し、皆様の愛犬や愛猫にとって最適な診断や治療を提供できるよう、陰ながらサポートさせていただきます。

 

超音波検査時の「毛刈り」について

みなさん、こんにちは。

画像診断科の石川雄大です。

当院で超音波検査を受ける場合には、「毛刈りが必要」と担当獣医師よりご説明があるかと思います。

見た目の問題や、お腹が冷えてかわいそう、他の病院では毛刈りをしないで診てくれた など様々な理由でお腹の毛刈りに抵抗感を感じられたり、渋々ご了承いただくケースも多いかと思います。

それにも関わらず、日頃よりほぼ全ての飼い主様が毛刈りに対してご同意くださり、検査にご協力頂けることにこの場を借りて感謝申し上げます。

今回はそんな飼い主様に少しでもご納得頂いて検査を受けて頂けるよう、超音波検査と毛刈りの重要性に関してお話したいと思います。

まず超音波検査の原理を簡単にご説明します。

超音波とは目に見えない、耳で聞こえない音波を指しますが、機器のプローブより連続的に発せられています。

しかしただ発生するだけでは画像は得られず、臓器にあたり反射した音波を受け取ることで画像化しています。

(嚙砕いたつもりでも難しくてすみません・・・)

つまり、しっかりとした画像の情報を取得するためには

①生体内にしっかりと音波が届くこと(往路)

②反射した音波をしっかりと受け取れること(復路)

この往復において超音波の情報がより多く、質が高いことが非常に重要となります。

では改めて、毛刈りがどうして必要なのか?

被毛があることで、超音波プローブと皮膚との間に傷害物(毛、空気)やスペースができてしまいます。

これは、

 

往路では、生体内に届く音波が減少する

復路では、反射した音波を受け取る際にも傷害物によってその情報がさらに減弱する

 

ことを意味し、これでは情報量の多い正確な画像が得られません。時とし病変の見落としや誤解釈に繋がりかねない状況と言えます。

つまり正確な画像を得るためには プローブと皮膚をしっかりと密着させることが重要であり、動物の場合には、このためには毛刈りは欠かせない前処置となります。

普段検査を実施する際には毛刈りを行った上でアルコールスプレーやゼリーを使うことでさらに細かな気泡や空間をなくし観察を行っています。

「質の高い画像を得る」ということは小さな病変や細かい変化を捉える上で非常に重要であり、早期発見や確実な診断に近づく第一歩となります。

実際に毛刈りを行わずに観察した画像と毛刈りを行った画像を見比べてみましょう

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写真①

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写②②

写真1は毛刈りを行わず超音波をあてた肝臓の画像です。

情報が減少し暗くザラザラした画像になっています。

残念ながらこの画像では臓器の色ムラや小さな変化は見つけることはできず、“大きな病変は”なさそうですとしか言えません。 

一方で写真2は毛刈りを行い超音波をあてた肝臓の画像です。写真1との違いは一目瞭然ですね。

いかがだったでしょうか?

とはいえバリカン負けで皮膚が赤くなってしまう敏感肌の子もいらっしゃいます。

れまでそのような経験がある方は遠慮なく担当医に申しつけください。

疑っている疾患や観察したい臓器、被毛の状況などで担当医と毛刈りの有無や範囲を相談させていただきます。

さいごに、

皆様それぞれ様々な悩み、症状を抱えられ、愛犬、愛猫もせっかく頑張って受ける検査ですので見落としや誤診があっては本末転倒です。

高度医療をお約束する専門医であるからこそ、常に高い精度と結果が求められていると感じております。

今後も日々妥協のない、質の高い医療を提供できるよう精進してまいります。

引き続き超音波検査の際には毛刈りに対するご理解とご協力をお願いいたします。

 

 

 

 

 

胸のレントゲンについて

こんにちは。画像診断科に所属している獣医師の杉野と申します。
 
今回は胸のレントゲンについてお話しします。
みなさんも健康診断や人間ドックなどでレントゲン検査を受けたことがあるのではないでしょうか。
また、中には咳が出る、息苦しいといった症状でレントゲン検査を提案されたことのある方もいらっしゃるかと思います。
ワンちゃんやネコちゃんでも同様に、我々獣医師は健康診断や呼吸器症状を認めた場合に胸のレントゲン検査を提案することがあります。
ただ、レントゲン検査をしたけど結局何を見ているの?と疑問に思う方も多いかと思いますので、簡単に、分かりやすく説明できればと思います。
 
まず、私達は呼吸器症状のある子達のレントゲンを読影する際に、大まかに肺に異常がないか、心臓や血管が大きくないか、気管や気管支の走行や太さに異常がないかなどを主に観察していきます。呼吸器症状を呈する疾患にはレントゲン上で肺や心臓、気管に異常があることが多いためです。
 
例えば、肺が白くなっている(病変がある)場合には、どのパターンに属するのかを評価します。
大きく分けて気管支パターン(気管支の壁が厚くなる)、間質パターン(肺がうっすらと白くなる)、肺胞パターン(肺がのっぺりと白くなる)に分類されますが、これらが複合することも多々あります。
また、肺が全体的に白いのか、部分的に白いのかといった病変の分布も併せて評価することで考えられる疾患を絞っていきます。
 
また、心臓の大きさの評価には主にVHSといって、心臓長軸と短軸の合計値が背骨何本分に相当するかという指標を用います。
 
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また、一概に心臓が大きいと言っても例えば心臓が全体的に大きいのか、左側や右側だけなど部分的に大きいのか、血管が太くないかといった所見も併せて評価し、心臓の疾患が呼吸器症状と関連しているのかどうかを評価します。
 
実際には今紹介したような項目の他にもっと多くの画像所見や臨床症状、動物種、年齢、治療歴などを総合的に考え、疑わしい疾患を絞っていきます。
 
具体的な例をいくつか挙げたいと思います。
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このワンちゃんは嘔吐した後から呼吸が苦しそうとのことでレントゲン検査を実施しました。
肺の右のお腹側あたりが局所的に白くなっています(肺胞パターン)が、心臓の陰影や気管の走行に明らかな異常はありません。このワンちゃんは画像所見から肺に膿がたまってしまう、細菌性肺炎という疾患が疑われます。
 
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このワンちゃんはもともと心雑音が指摘されていた子で、最近呼吸が早いように感じるとのことでレントゲン検査を実施しました。肺が全体的に白くなっていますが、特に肺の背中側あたりに強く病変がでています(肺胞パターンと間質パターン)。また、心臓は正常よりも大きくなっており、これにより気管は背骨側に押されています。このワンちゃんは、心臓が悪いことにより肺に水が溜まってしまう、心原性肺水腫という疾患が疑われます。
 
このようにレントゲン検査は呼吸器に異常がある子に対して非常に有用な検査ですが、もちろんレントゲン検査だけで病気を断定できるというわけではなく、レントゲン検査で全く異常を検出できない疾患も存在します。そのため、血液検査や超音波検査などの様々な検査を行い、総合的に診断していく必要があります。
 
もしもワンちゃんやネコちゃんの呼吸がいつもと違う様子があれば、すぐに病院でご相談ください。

画像診断科獣医師の石川雄大と申します

皆様

はじめまして。昨年6月より画像診断科で勤務しております獣医師の石川雄大と申します。

普段飼い主様と接点が少ない画像診断科に所属しており、またブログが初めてであるため、遅ればせながら自己紹介させていただきます。

出身は三重県で、この春で臨床9年目になりました。

趣味はカメラで、入間に引っ越してきて雄大な自然に囲まれた環境で野鳥撮影にはまっています。

私は2014年に帯広畜産大学を卒業後、愛知県の動物病院で一般診療に従事し、その中で画像診断の魅力や奥深さ、難しさを肌で感じもっともっと突き詰めたいと思い横浜の病院へ転職。

その後ご縁があり昨年より当院の画像診断科の一員となりました。

画像診断分野は血液検査などとは違い検査機器が「ここおかしいですよ!」と異常を知らせてくれるものではありません。

つまり画像を見る人、検査をする人の技量や経験、知識量によって得られる情報量や診断は大きく左右される分野です。

日本全国の動物病院を探しても画像診断科が設立されている病院はまだ少ないのですが、当院では5人の画像診断医(非常勤を含む)が在籍しており、どの曜日にも画像診断検定医が常在しています。

この層の厚さは当院画像診断科の最大の強みと感じております。

普段なかなか飼い主様と接点がない診療科ですが、画像検査の際にはどうぞお任せください。

陰ながら最大限に診療のサポートをさせていただきます!

最後になりましたが、最近撮影したカワセミとルリビタキの写真を添えたいと思います。

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肝臓は沈黙の臓器

こんにちは。獣医師の勝山です。

ここのところ急に寒くなってきましたね。

そのせいか、我が家の猫達は私の膝の上で暖を取ることが多くなってきました。

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この子たちが一気に乗ってくると結構重いです!

さて、それとは全く関係ありませんが、今日は肝臓のできものについて少しお話ししたいと思います。

『肝臓は沈黙の臓器』と言われるのをよく耳にすると思います。

なぜかというと、肝臓の病気はある程度進行しないと症状が出ないことが多いからです。

動物でも同じで、肝臓にできものができても症状として出ることは少ないためなかなか気付きにくく、健康診断や他の病気で検査をしたときに偶然みつかることが多いです。

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X線検査で、肝臓のあたりに大きい影がみられます。

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エコー検査をすると、肝臓に大きいできものがみられます。

肝臓にできた腫瘍は手術で完治するものが多いため、X線検査やエコー検査で腫瘍が疑われる肝臓のできものがみつかったら、手術で切除することを検討します。

手術をする上で、肝臓のどの位置に腫瘍があるかが重要になってきます。

そのため、CT検査を行って腫瘍の正確な発生部位を特定し、手術で切除可能かどうかを正確に判断します。

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CT検査で、肝臓のできものは肝臓の外側左葉という部位に発生していることがわかりました。

肝臓の腫瘍は、早期に手術で切除することで完治するものが多いです。

ただし、あまりにも大きくなってしまっていると手術で取り切れないことがあります。

そのため、定期的に健康診断をして早期発見することが大事だと思いますので、検査を希望の方はスタッフまでご相談ください。

 

先天性門脈体循環シャント

こんにちは、獣医師の杉野です。

今回は先天性門脈体循環シャントという病気について簡単にご説明したいと思います。

動物の体の中には栄養分や毒素を肝臓へと運ぶ門脈という血管があります。

動物たちの中には、この門脈が先天的に全身の静脈とバイパスされてしまっている子がいます。

この異常のことを門脈体循環シャントと言います。

シャントがあると、本来肝臓へ行って代謝・分解されるはずだった栄養分や毒素がそのまま全身に回ってしまうことが問題になります。

これにより、初期には嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が出ることが多く、進行してくるとふらつきや発作などの神経症状がみられることもあります。

診断は、血液検査やレントゲン、超音波検査、CT検査などで行います。

は門脈体循環シャントの症例のCT画像から3D構築した画像です。

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門脈体循環シャントだと分かったら、手術を行い、その異常な血管を縛ることで治療することができます。

手術以外の治療法は点滴や低蛋白食などの対症療法に限定され、残念ながらそれらで完全に治ることはありません。

仔犬なのに食が細い、成長が遅い、食後にぐったりしてしまうなどといった症状があったら、門脈体循環シャントのサインかもしれません。

もしこういった症状がみられましたら、早めに病院で検査することをおすすめします。

 

胸水について

こんにちは、獣医師の勝山です。

新年になりましたが、未だ新型ウイルスの収束はみえず、落ち着かない生活を余儀なくされていることと思います。

しかし、こういったご時世にかかわらず、具合の悪い動物はかわらず病院に診察にきます。

今回は胸水について少しお話します。

胸水とは、胸の中に貯まる水のことをいいます。

胸の中には主に心臓、肺がありますが、肺はとても柔らかい臓器なので、胸に水が貯まると水のせいで肺が膨らめなくなってしまいます。このため呼吸が苦しくなってしまいます。

胸水の原因は、腫瘍や心臓病など、様々な病気があります。

診断にはまずレントゲン検査を行います。

レントゲン検査で、胸水やその他の病気(肺炎や肺水腫など)がないか調べます。

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これは正常な胸のレントゲン画像です。

真ん中に心臓がみえて、その周りの黒いところが肺です。

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これは胸水が溜まっている胸のレントゲン画像です。

胸の半分くらいが白くなってしまい、正常な肺は半分くらいしかみえません。

白くなっているところが胸水です。

胸水が溜まっていることがわかったら、原因を調べるために溜まった液体の検査や超音波検査などを行い、原因に合わせた治療を行っていきます。

呼吸が明らかに苦しくなった場合にはお家でも気付けると思いますが、初期には少し呼吸の回数が増えた程度の事が殆どで気付けないことが多いです。

そのため、普段どれくらいの速さで呼吸しているかをチェックしておくと、呼吸が速くなったときに気づきやすいと思います。

お家にいる時間が長くなっているときだと思いますので、ぜひチェックしてみてください。

チェックするときは、運動後や食後などは避けて、落ち着いているときにしてくださいね。

 

〜参考〜

犬の呼吸数の基準値

 小型犬:20〜30回/分

 大型犬:   15回/分

 

 

 


 

 

画像診断科のご紹介

こんにちは。獣医師の杉野です。

僕は現在、当院の画像診断科に所属しています。

画像診断科というと、直接診察にかかわることはなく、皆さんとお話することも少ないので、あまり馴染みがないかもしれません。

今回は、僕たちがどのように診療に携わっているのかを簡単にご紹介したいと思います。

まず、院内の各科の先生たちから画像検査の依頼を受けることから始まります。

その依頼に応じて、X線や超音波、CT、MRIといった検査の撮影や読影を行っていきます。

撮影された画像情報から、病変部の形や見え方などに注目しながら有用な情報を見つけ出し、考えられる病気を各科の先生たちに伝える役割を担っています。

病気によっては画像検査が診断の要となる場合も多く、その後の治療方針に大きく影響を与える可能性があるため、責任は重大です。

また、必要に応じて超音波装置やCTを用いて目的の病変に針を刺して細胞や組織をとる検査をしたり、CT検査で得られた画像を3D画像に再構成する処理を行っています。

このように僕たち画像診断医は基本的に裏方仕事を行うことが多く、表舞台に立つことは少ないですが、高度な医療を提供する上で必要不可欠な存在だと考えています。

当院には専門的な知識を有する画像診断医が多数在籍していますので、時には複数の診断医と意見交換を行いながら、適切な判断を下せるように努めています。

 

 

 

脾臓のできもの

こんにちは。獣医師の勝山です。

今回は脾臓のできものについて少しお話したいと思います。

犬の脾臓のできものには、大きく分けて良性と悪性があります。

一般的には悪性は手術や抗がん剤をしないと命にかかわり、良性であれば治療しなくても命にかかわることはないというイメージがあると思いますが、脾臓に関しては良性でも命にかかわることがあるので注意が必要です。

なぜかというと、良性でも大きくなって破裂してしまうことがあるからです。

脾臓は血液を多く含む臓器なので、脾臓のできものが破裂するとお腹の中で大量出血をすることがあります。

その場合、急速にショック症状を起こします。

症状としては、

  • 急に倒れてぐったりする
  • 貧血(口の中が白い)
  • 呼吸が速い
  • 頻脈

などです。このような状態になると、場合によってはそのまま命を落とすこともあります。

また、破裂がない場合でも、なんとなく元気がなくなったり食欲が落ちたり、などの症状がでることがありますが、気づくのが難しいことがしばしばあります。

脾臓の腫瘤は腹部の超音波検査などの画像診断によってみつけることができます。

良性であれば手術のみで治すことが可能ですし、悪性であっても早期に発見することで元気な時間を長く過ごせる可能性があります。

できれば深刻な状況になる前に治療してあげたいですね。

当院では超音波検査を含めた健康診断も行っていますので、気になる方はスタッフにご相談ください。