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腫瘍科

「定期けんしん」について

 こんにちは。腫瘍科獣医師の前田です。

今回は「定期けんしん」についてのお話になります。

けんしんって、「検診」と「健診」がありますが、どう違うのでしょうか?

簡単に言うと「検診」は、「ある特定の病気を調べる」ための検査であり、「健診」は「現在の健康状態を調べるための検査。健康診断の略。」だそうです。

ということは、腫瘍科での「定期けんしん」は「がんの有無や進行度合いについて検査するための検査」なので「検診」ということになりますね。

がんを見つけ、手術をして取り除いた後は、基本的には術後の定期検診をおすすめしています。

というのも、がんというのは“悪性腫瘍”のことであり、再発や転移を起こす可能性があるため手術が無事終わったからといって手放しで喜ぶことはできません。

定期検診の内容、間隔、期間についてはがんの種類や悪性度、転移の有無等によって様々です。

多くは2-3か月に1回の頻度、あるいは内服薬で長期的に抗がん剤治療を実施している患者さんでは1か月に1回、という頻度での検診をおすすめしています。

内容は、身体検査、血液検査や超音波検査、X線検査、必要に応じ血圧測定やホルモン測定等も行います。

例えば、リンパ節や内臓(肝臓、脾臓をはじめ原発巣に近い諸臓器等)に転移を生じやすいがんであれば毎回超音波検査を実施したり、肺へ転移しやすいがんであれば胸部X線検査を実施したりします。

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【胸部X線検査で見つかった、肺の転移病変】図1

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【胸部X線検査で見つかった、肺の転移病変】図2

血液検査についてですが、人医療とは違い、動物医療では優れた「がんマーカー」というのは現状ありません。

ですので、私たちが検診の際にチェックしていることというのは、がんが存在することで二次的な異常が生じていないか(例えば、肝臓腫瘍の増大によって肝細胞がダメージを受けて肝酵素値が顕著に上昇する場合等)、抗がん剤治療による副作用(血球減少や肝臓/腎臓の数値異常等)が生じていないか、といったものになります。

もちろん、定期検診は検査内容が多く、費用もそれなりにかかります。例えば血液検査、胸部X線検査、腹部超音波検査を実施した場合は1日で3〜4万円程かかることがあります。

検査の必要性と、実際にご家族や動物にかかる負担(費用面、移動や検査にかかる精神的/身体的負担)を加味し、適正と考える内容でおすすめできるよう努めています。

定期検診で来院されるご家族は、動物さんの体調が安定している時、笑顔で近況をお話してくださります。

ですが、そのような中でも「本当に大丈夫だろうか。再発や転移はしていないだろうか。」と不安な面持ちをしているように感じています。

検査の結果、問題が無いと分かった時は本当に安心したという表情をされています。

がんになった動物さんとそのご家族は再発、転移に不安を抱えつつ過ごすことになるかと思います。

その不安を少しでも和らげられるように、腫瘍科の獣医師としてサポートさせて頂きたいと思います。

抗がん剤について

こんにちは。腫瘍科 獣医師の小林です。

今回は腫瘍の治療で使用する抗がん剤についてお話したいと思います。

抗がん剤というと、ドラマや映画などで見かけるようなとても過酷な治療というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

確かにほとんどの抗がん剤は副作用を伴うお薬なので、投与することで体調を崩してしまうリスクがあります。

しかし、動物での抗がん剤治療では人での抗がん剤治療ほど重篤な副作用が起こることは少ないです。

なぜなら、人の医療ほど副作用に対応できる設備が整っていないため、高用量での抗がん剤治療ができないからです。

例えば、人の抗がん剤治療で使用されている『無菌室』や『骨髄移植』などは獣医療においてはまだまだ整備されていません。

そのため、獣医療においては人医療よりもマイルドな抗がん剤治療しかできないのが現状であり限界でもあります。

 

ところで、なぜ抗がん剤治療を行うと副作用が起こるのかを考えていきたいと思います。

まず前提として、抗生物質や下痢止めなど、どんなお薬でも副作用が起こる可能性があります。

ただ、治療効果を期待できる薬用量(治療域)と、副作用が起こる薬用量(中毒域)の差幅が広いため副作用が問題になりにくいだけなのです。

一方で抗がん剤はその差幅が狭いため、副作用が起こりやすいということです。

イメージの参考にグラフにしてみました。左が一般的なお薬のグラフで、右が抗がん剤のグラフになります。

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オレンジ色の領域にあれば副作用もなく安全に使用できますが、緑の領域に入ってしまうと副作用が生じてしまうというグラフです。

抗がん剤はオレンジの幅が狭いのでそこを狙うのが大変になります。

しかし、我々獣医師は重度な副作用を起こさないために、個々の患者さんの体調や検査結果をもとに治療を行うタイミングや投与する薬剤の量を検討し決めています。

また、発生する可能性が高い副作用に対しては予防的にお薬をご準備させていただくこともあります。

 

ご家族の一員である動物達ががんを患ってしまい飼い主様は不安でいっぱいだと思います。

ましてや馴染みのない薬剤を使用する抗がん剤治療においてはその不安も一入だと思います。

そんな不安を少しでも解消して一緒に治療させていただきたいと思っています。なので、どんなに些細なことでも心配なことがあればご相談ください。

 

最後に我が家の新しい家族(湊くん)をご紹介して終わりたいと思います。

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元々は保護犬でしたが、だいぶ家にも慣れてくれてマイペースに元気に過ごしてくれています。

ちなみに、湊くんはチワワなのですが、携帯で写真検索するとポメラニアンと認識されてしまうのはここだけのお話です(笑)

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獣医師 小林

 

リンパ節のお話

こんにちは。腫瘍科の前田です。

早速ですが、私たち獣医師は、動物たちの健康状態を把握するためにいろんなところを視たり、触ったりします。

目(結膜の色、できものの有無)、口の中(歯肉の色、歯周炎の程度、粘膜の乾き具合、できものの有無..)耳の中(外耳炎やできものの有無..)、体表(栄養状態、水和状態、紫斑や紅斑など色調の変化、できものの有無..)、腹腔内(正常臓器の確認、異物や宿便、できものの有無..)、乳腺(できものの有無..)、精巣(正常な位置にあるか、左右の差やできものの有無)、肛門周囲(炎症や肛門嚢の貯留、できものの有無..)、ありとあらゆる所を覗いて、触っていきます。

そして今回のテーマとなる「リンパ節」ももちろん触っていきます。

病気の状態によってはそのサイズを測定し治療効果の判定に用いることもあります。

ところで、「リンパ節」とは何でしょうか。。

「リンパ節とは…リンパ管の所々にある粟粒大や大豆大の小器官。網状に結束した構造をもち、リンパ球やマクロファージなどが充満しており、リンパ中の異物・病原菌・毒素などを捕食したり免疫応答を行ったりして生体を防御するもの。」

 簡単に言うと、体表に近いところ(体表リンパ節)や胸の中(胸腔内)、お腹の中(腹腔内)のあらゆるところにある小さな構造物です。

正常時の大きさは部位によっても異なりますが、粟粒くらいのものから、大豆くらいのものなど様々です。

リンパ節は、言うなれば“免疫の関所”として細菌、ウイルスなどの侵入者や異常な細胞(がん細胞)をせき止めて免疫細胞が排除しようと闘ってくれる場所です。

がんを患う患者さんでは、病変の近くにあるリンパ節に転移を生じることが多いです。

ですので、まずはじめの診断時にはリンパ節の腫れの有無を評価しそこに転移を生じていないか確認します。

必要であれば細い針を刺して少量の細胞を採取して細胞診を実施します。治療後、定期検診の際にはそれらリンパ節が腫れてきていないか、その硬さが変わってきていないか、等に注意して経過を見ることとなります。

例えば、左右差のあるリンパ節、いつもより硬くなったり可動性(触って動かせるかどうか)が少なくなっているリンパ節。

これらは要注意です。

一度がんを患ってしまった動物達は、積極的な治療により根治できる場合もありますが、治療後も再発や転移が生じてこないかどうかは定期検診により注意深く経過を見る必要があります。

病気の種類、病状によってその頻度は様々ですが、1-2ヵ月毎の検診間隔となる場合が多いです。

胸の中やお腹の中のリンパ節や臓器をメインに評価していく場合はレントゲンやエコー検査など院内で実施する検査でなければ判断が難しいです。

一方で、がんの種類によっては体表のリンパ節に異常が出やすい場合があるため、日頃から意識して触って頂くことで早期に異常に気づくことができるかもしれません。

特に、ワンちゃんの多中心型リンパ腫では、全身の体表リンパ節が顕著に腫大します。

抗がん剤による治療で腫れたリンパ節は縮小していきますが、治療中あるいは治療プロトコール終了後に“再燃”した場合、再びこのリンパ節が腫れてきてしまいます。

再燃した場合は、投与プロトコール自体を変更したり、治療終了していた子では抗がん剤を再開して再びがんと闘っていくこととなります。

がん細胞が少ない状態で治療を始めることが望ましいため出来るだけ早く異常に気づく必要があります。

リンパ節の触診には少しコツが必要ですが慣れれば獣医師でなくても容易に実施可能です。

動物の体表リンパ節は、頭から尾の方向へ向かって、主に「下顎リンパ節」、「浅頚リンパ節」、「腋窩リンパ節」、「鼠径リンパ節」、「膝窩リンパ節」などがあります。

どのリンパ節も異常に腫大した場合は簡単に触知可能ですが正常〜軽度の腫大くらいでは触知できないものもあります。

この中で下顎リンパ節、膝窩リンパ節については腫大していない場合も少し慣れれば触知可能です。

浅頚リンパ節については少しわかりにくいかもしれませんが、腫れたものは触知可能かと思います。

リンパ節にはリンパ管を通じてリンパ液が流れ込みますが大体のリンパ液の流れは以下の図のようになります。図の中で、②が下顎リンパ節、③が浅頚リンパ節、⑥が膝窩リンパ節です。

 

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(リンパ液の流れ、「Veterinary Oncology vol5 No.4 2018 より引用」)

実際に触診している様子を示します。

下顎リンパ節。顔面静脈という血管の側にあります。下顎の骨の後ろ辺りに位置しています。

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浅頚リンパ節。上腕頭筋、肩甲横突筋の内側にあるので筋肉の内側を探るように触ります。

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膝窩リンパ節。膝の裏の脂肪組織の中に位置します。

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内股にある鼠径リンパ節(⑤)や、脇にある腋窩リンパ節(④)については、明らかな腫大が見られないか、その領域を触って確認します。ただし、これらリンパ節は重度に腫れない限り触知することが困難だったり、周囲脂肪組織との区別が難しいため必要に応じてエコー検査で評価します。

体表リンパ節は、ご自宅でスキンシップを取る際に少し意識して頂ければ何となーく分かってくるかと思います。

はじめはどれがリンパ節なのかはっきりと分からなくても、腫れてきた際には「あれ、いつもと違って何か丸いものが触れるかも。。」と早い段階で異常に気づくことができるかもしれません。

病院での検診も大事ですが、ご自宅においても今回のようなリンパ節セルフチェックを実施して頂き治療に結びつけていければ、と思います。

実際にどうやって触ればいいのか、気になる方は診察の際に仰って頂ければアドバイスさせて頂きますのでお気軽にお声掛け下さい。

がん(悪性腫瘍)は非常に手強くて、厄介なものです。

治療には時に大きな負担を伴い、頑張って治療を乗り切った後も再発や転移といった見えない不安がつきまとうものです。

少しでもその不安を緩和する手助けができれば、と思いつつ日々診療に当たらせて頂きたいと思います。

 

腫瘍科 前田

 

 

 

 

診察室の奥で覗き見ているもの。

こんにちは、獣医師の前田です。

昨年10月より腫瘍科で勤務しています。

さて、ワンちゃんも猫ちゃんも大切な家族の一員でありスキンシップは欠かせませんよね。

私自身、帰宅するといつも真っ先に飼っている猫のお腹に顔を埋めてリラックスさせてもらっています。

体を撫でている時に、「あれ、何か触れるぞ。これは何だろう。。」と謎のできものを見つけてしまうことがあるかと思います。できものと言っても色々な種類のものがあり、もちろん何かの“がん(悪性腫瘍)”であることもあります。

不安になりますよね。

そんな時は我々獣医師にご相談ください。

できものの大きさ、発生部位、状況(破裂したり化膿したりしているか)にもよりますが動物の負担が少なく迅速に実施可能な検査法の一つとして“針生検”というものがあります。

採血で使用する細い針を使って、できものから細胞成分を採取し顕微鏡で観察するという検査です。

実際にどんなものを見ているの?と、思いますよね。

今回は、診察室の奥で我々が何を見ているのかについて一部ご紹介します。

 

まずは針生検の手順について、

①できものを発見します

→②触ったり、大きさを測ったりしてできものの状況を確認します

→③針で刺します

→④スライドグラスに採取した細胞を吹き付けて、染色します

→④さあ、顕微鏡で見てみましょう!

顕微鏡を覗くと見えてくる細胞達です。

丸い形が主体のものや・・
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長細く伸びてあまり固まっていないもの・・
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ぎゅっと塊状になっているもの・・
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色々な形をしたものがあります。

典型的な形態を示す腫瘍(肥満細胞腫、リンパ腫など)は針生検のみで診断することもありますが、多くの場合は「〇〇っぽい。」という所までしか判断できません。例えば、「似たような形態をした細胞ばかり見えるので、腫瘍っぽい。」とか、「様々な炎症性細胞が混在して見えるので、炎症性のものっぽい。」とかです。

このような場合、確定診断のためには最終的に組織を一部切り取る切除生検をしたり、治療を兼ねて、できものそのものを切除することが必要となりますが全身麻酔で実施しなければなりません。

全身麻酔や手術は、程度にもよりますが、動物達の体に負担をかけるものです。

しかし、できものが悪性腫瘍であった場合は放っておくとどんどん大きくなったり、いつの間にか遠隔転移を起こして治療適期を逃してしまう可能性があります。

麻酔、手術を行うことで得られるメリット(診断がつく、治療ができる)とデメリット(麻酔リスク、体の負担)を天秤にかけて治療方針を決定しなければいけません。

その際に「〜っぽい。」という客観的な情報が一つあるだけでも、積極的な検査や治療を進めるか、少し経過を見てみるか、という判断の助けになるかと思います。

動物達の健康状態も様々であり、容易に判断できないことがほとんどです。

そのような場合は気軽に私達にご相談ください。

自分達の知識、経験をもとに動物達とご家族が納得できる治療方針を共に考えていきたいと思っています。

正体のわからないものをそのままにしておくことは思っている以上に不安になるものです。

今回ご紹介した針生検自体は麻酔もなく気軽に行える検査であり、確定診断までは難しいものの、何となーく正体がわかるだけでもご家族の心は落ち着くと思いますし、その後必要なことについて前向きに考えることができることと思います。

特に腫瘍科を受診される患者様は悪性腫瘍を患い、難しい状況にあったり、厳しい選択を迫られることもあり不安を抱えて来院されていると常日頃感じています。

私自身も獣医師になってからずっと共にしている家族(猫)がおりますので、その気持ちが痛い程に分かります。

動物達とそのご家族の不安を少しでも和らげてあげられるよう常に心がけ、今後も診療にあたっていきたいと思います。

とりあえず、本日も早く自宅に帰って猫のお腹に顔を埋めて、健康であることのありがたさを感じさせて頂こうと思います。

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腫瘍について

こんにちは。看護師の庭野です。

蝉が鳴いて、一気に夏らしくなりました。

今回は腫瘍についてのお話です。

犬や猫の長寿化が進み、腫瘍が発生する率が高くなりました。

‘腫瘍’と聞くと、厳しい闘病生活や、抗がん治療などを想像される方も少なくないと思います。

腫瘍には良性・悪性があり、悪性でも比較的進行が遅いものがあります。悪性であっても、上手に腫瘍と付き合って、元気に生活している患者さんもいます。

しかしながら、厳しい現状となってしまうことも多い、腫瘍という病気。

病気を知って治療をしていく中で、たくさんの葛藤が生まれると思います。

治療法は患者さん、そして飼い主さんによって様々です。

腫瘍科の診察の際は看護師が同席していますので、悩まれた時には一緒に考えさせてください。

診察室だと少し言いづらい…ということも、待合室や別のお部屋でお聞きいたします。

わんちゃん猫ちゃんの大切な時間をより良く過ごせるように、少しでも力になれればと思います。

お口の中に潜むできものにご注意を

 お口の中に潜むできものにご注意を

こんにちは、腫瘍科 獣医師の平林です。

当院の腫瘍科では、皮膚のがん、内臓のがん、鼻のがん、血液のがんなど、様々ながんの診療をしています。

今回は、最近診療の機会が多い、口の中に潜むがんについてお話をしたいと思います。

がんは体のいろいろな所に発生します。

動物では皮膚のがんが最も多く、比較すると口の中のがんは多くありません。

ただし、皮膚のできものは、動物の体の見た目の変化や、ご家族が動物に触れている時の違和感から、発見されやすいのに対し、口の中のできものは大きくなるまで発見されにくいことが多いです。

 

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口の中にできものができても、最初のころは普段通りに食事をする子も多いため、できものが大きくなって口の外側に出てきたり、頬が腫れてきたりするまで見つからないことが多いです。

口のできものには、炎症による歯肉の腫れや、良性の腫瘍、悪性の腫瘍(がん)があります。

炎症や良性の腫瘍は、歯科処置や、できものの切除で治ります。

がんについても、手術で取り切れれば完治が望めます。

しかし、できものを完全に取るには、顎の切除が必要になり、少し大掛かりな手術になることもあります。

また、大きくなってからの発見では、がんを完全に取り切ることが難しく、すでにリンパ節や他の部位に転移していることもあります。

がんは発生を予防することが難しいできものです。

しかし、早期に発見することで、しっかりと治療ができることもあります。

動物の口の中をしっかり見るのはなかなか難しいですが、動物があくびをした時、ワンワンと吠えている時、はあはあと息をしている時、歯磨きの時などにのぞいてみてください。

 

 

 

 

 

わかりやすい診療のために

こんにちは、獣医師の平林です。

暖かくなり、過ごしやすい季節になってきましたね。

外を歩くのがとても気持ちいいです。

 

今日は、診療の時にみなさんにお渡ししている病気の説明書についてお話しします。

当院では、病気についてご説明する時や治療方針をご相談する時に、このような説明書をお渡ししています。

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病気の特徴や、治療をするのに必要な検査内容、治療の選択肢などについて、絵や表を用いて記載しています。

もちろんこれらの内容は診察室でお話するのですが、ご自宅に戻られてからご家族の方と相談をしたり、後で振り返っていただく時に使っていただきたいと考えています。

 

これらの説明書は当院の獣医師が獣医学情報を集め、力を合わせて作成しています。説明書によって、かっこいい図や手書きのかわいい絵が入っている手作り作品です。

また、患者さんごとに異なる細かなことは、個別に説明書を作成してお渡ししています。

 

今はすべての病気の説明書があるわけではありませんが、少しずつ増やしていきます。

みなさんに、確かな情報をわかりやすくお伝えできるようにがんばります!

体調の変化に早く気が付くために

こんにちは。

獣医師の平林です。土曜日の腫瘍科で勤務をしています。

当院ではたくさんの患者さんの抗がん治療を行っています。

抗がん治療は、がんを抑える効果がある一方で、副作用への心配がつきものです。

副作用は、重く出てしまう子もいれば、ほとんどでない子もいて、程度は様々です。大切なことは、副作用がでてしまった時に、早く、適切な治療をしてあげることです。

今回は、体調の変化に早く気づくために、病院でとっている体制やご家族にご自宅で行っていただいていることについて、皆さんにご紹介をしたいと思います。

体調の変化は、元気、食欲、お水を飲む量、体温、心拍数、呼吸数、尿や便の状態でみていきます。

通院になる際には、ご家族にこのような紙をお渡しし、はかり方を一緒に練習します。

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記録はこのような紙にしていただいています。

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食欲があり、元気なのにいつもの体温よりも高め、午後になって急に高くなった、などということがあった場合、重大な副作用が隠れていることがあります。

朝晩、記録することで、体の変化に早く気づくことができます。

記録をしていくうちに、このお薬の時には、治療をして何日後にお腹がゆるくなるなどと、お薬の種類によってでてくる変化も見えてきます。

そうすると、その子の体質や治療薬に応じたサポートができるようになります。

患者さんとご家族に安心して治療を受けて頂けるよう、当院は24時間、スタッフが病院に常在しています。副作用に対する様々なお薬を常備し、急な体調変化に対応が出来るようにしています。

治療中はご心配なことが多いと思います。どんなことでもご相談ください。

お年寄りのねこちゃんのトイレの工夫

こんにちは。

腫瘍科を担当しています院長の林宝です。

今日は腫瘍科の観点からねこのトイレについての事を書きたいと思います。

当施設の腫瘍科には、がんと闘うために抗がん治療を行っている動物が大勢います。

抗がん剤は、そのお薬の種類によって様々な副作用が問題となります。

その中でシクロフォスファミドという抗がん剤で一番注意しなければいけないのが出血性膀胱炎です。

この膀胱炎の予防で最も大切なのが抗がん剤投与後におしっこを我慢させないという事なのです。

ワンちゃんは、頻繁におトイレに連れて行ったり、お散歩に行ったりという事である程度予防が可能です。

しかし、猫ちゃんは結構難しい側面があります。

トイレが汚れていたり、トイレに入りにくかったりという事があると我慢してしまいます。

特にお年寄りの猫ちゃんは、ご家族が気づいていないレベルでも膝や股関節が痛い、あるいは足腰が弱っている事でトイレに行く事をついつい我慢してしまう事があるようです。

抗がん治療の有無にかかわらず排尿を我慢する事は動物にとっていい事はありません。

ご自宅でできる努力と工夫としてトイレをなるべく清潔に保ってあげる事とトイレの形や入りやすさを見直してあげる事をおすすめします。

市販されているトイレの入り口を比べてみると結構違う事がわかります。

院長トイレ

写真の一番左端のトイレは犬用ですが、砂が飛び散るのが大変ですが、高齢の猫ちゃんにとってはこの方が優しいかもしれません 。

りゅう君が、がんになりました。(犬のがん)

腫瘍科を担当しています林宝です。

私は、主にがんの動物の診療をさせていただいています。がん患者様の診療で特に気をつけている事は、

1.正確な診断、がんの進行度の判定

2.適切な治療方法の選択肢の提案

3.ご家族や動物の様々な状況に寄り添った治療の提案

4.各治療の利点、欠点、リスクをできるだけわかりやすくお伝えする

5.将来の予測をできるだけ正確にご家族にお伝えする

 

この5つを常に念頭におきながら動物とそのご家族に何がベストなのかを考えながら診療にあたっています。

そんな中、長い間献血で大活躍してくれた当施設の看板犬の1頭であるりゅう君の前肢に軟部組織肉腫というがんが見つかりました。

発生した部位が肘である事や、組織検査の結果で悪性度が高い可能性が予測された事などから治療の選択は非常に難しい判断となりました。

前述の5つのポイントを自分に問いかけながら手術、抗がん治療、放射線治療など様々な治療方法を担当スタッフと検討しました。

その結果、我々は、りゅう君の左前肢を断脚する事に決めました。

苦渋の決断でした。

がん治療において断脚を行う目的は大きく分けて2つ存在します。

1つは、完治や長期延命を目的としたもの、もう一つはがんの完治は期待できなくてもがんによる痛みを取り除く目的で行うケースです。

いずれのケースでも断脚の必要性を告知されたご家族のショックは多大なものだと思います。

私が、断脚を提示した際に、殆どのご家族は1回断脚を拒否します。

その理由は殆どの人が断脚手術後に動物が歩けなくなってしまうと思っているからです。

我々人間と違い、4本の足を持つ動物は3本足でも想像以上に上手に歩き、走ることができます。

また、外観上の変化を悲観してしまうこともありません。

既に痛みを伴っている動物では痛い足を引きずりながら生活するより生活の質もかえって向上します。

もちろん残った3本足に関節炎などの他の病気が存在する場合や極度の肥満動物に対しては断脚手術を慎重に検討する必要があります。

獣医師は術前に詳細に動物の評価を行い、動物の断脚後の生活をできるだけ正確に予測し、ご家族にそれを伝える事が重要だと思います。

また、断脚を回避できる他の治療方法についても詳細に検討する必要もあります。

手術の危険性についても誤解が多いように思います。

断脚手術は決して簡単な手術ではありません。

もちろん術前に動物の体力を詳細に把握しておく事は必須です。

しかし、十分なトレーニングと経験を積んだ獣医師が執刀すればハイリスクの手術では決してありません。

これらの誤解は、動物のご家族のみならず、我々獣医師や動物看護師にも存在しているように思います。

りゅう君のがんは、前肢を温存しての手術や術後の抗がん治療あるいは放射線治療を併用する方法も考えられました。

しかし、彼の年齢やシャイな性格も考慮して今回の治療法に決めました。

りゅう君は今回の手術で完治が十分に見込めます。

当施設には、幸いリハビリテーションの専門スタッフがおります。

人同様に動物でもリハビリテーションは、非常に重要です。

手術直後から徐々にリハビリテーションを開始しています。

手術直後は少し戸惑っていましたが、今は日々元気なりゅう君に戻ってきています。

りゅう君は、これまで献血で数え切れないほどの動物の命を救ってくれました。

私のかけがえのない相棒の一人です。

1日でも元気で長生きしてもらいたいと願っています。

皆さん応援よろしくお願いします!

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犬や猫のがんを早期発見するためには!

こんにちは、腫瘍科を担当しています院長の林宝です。

今回は、ご自宅でできるがんの早期発見方法について書きたいと思います。

皆さんご存知のようにがんは命を奪う恐ろしい病気です。

しかし、動物のがんの治療は年々進歩しており、完治できるがんも増えてきているのも事実です。

がんを治すには、なんといっても大切なのが早期発見です。

同じがんでも発見時期によって完治率が大きく変わってくるのです。

 

1.とにかく良く体中を触ってあげる事

病院で身体検査を受け頂く事でがんを発見できる事もありますが、実は身体検査はご自宅の方が詳しくできます。

どうしても動物は診察台の上では緊張や興奮をしてしまう事が多いですが、ご自宅でリラックスしている時はゆっくり、じっくり触る事が可能です。

専門知識がなくても皮膚や体の表面にできたできものは毎日触っていれば小さな物でも気づける事が多いと思います。

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<背中に発生した皮膚肥満細胞腫>

 

2.発見しにくい場所

がんがよくできるのに発見しにくい場所があります。

ひとつが口の中にできる口腔内腫瘍です。特に殆どのワンちゃんは、病院では口の中をじっくりは見せてくれません。

ご自宅でリラックして口を開けている時に覗き込むようにして下さい。2つ目が肛門周囲の腫瘍です。肛門の周りにも腫瘍は頻繁にできますし、肛門嚢(におい袋)にもがんができる事は珍しくありません。

お尻の穴なんて普段見ないところですが、注意して見て、触ってあげて下さい。

3つ目が耳の内側です。ここにも腫瘍ができますのでよく見てあげて下さい。

それから雄犬の精巣も高齢でがんになる事があります。精巣も触ってあげて下さい。

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<身体検査で発見された口腔内腫瘍>

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<肛門嚢アポクリン腺癌>

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<耳の内側に発生した肥満細胞腫>

 

3.リンパ節を触ってみましょう

体の表面にあるリンパ節の位置を覚えて頂き、触ってみて下さい。

犬と猫で最も多いがんであるリンパ腫を早期に発見できるかもしれません。

<体表リンパ節(犬も猫も基本的に同じです)>

 

4.鼻血が出たら直ぐに病院へ

動物は人と違って滅多な事では鼻血が出ません。

くしゃみが続いたり、1回でも鼻血が出たら鼻腔内腫瘍の可能性がありますので直ぐにご相談ください。