2024年7月
犬猫の目のケアについて
こんにちは。動物看護師の吉冨です。
今回は犬猫の目のケアについてお話ししたいと思います。
犬と猫に目のケアが定期的に必要であることはご存知でしょうか?
目のケアを怠ると様々な病気に発展する可能性があります。
目の周りに付着した目ヤニを放置すると被毛に付着した目ヤニが固くなり、
取りにくくなってしまったり、目ヤニの下で皮膚炎を起こしてしまうことがあります。
目ヤニの原因は結膜炎や角膜炎、鼻涙管閉塞などがあげられますが、炎症を放置してしまうと角膜潰瘍に進行し、角膜穿孔といって角膜に穴があき、炎症が広がって失明してしまう可能性があります。
目の病気にかからないためにも定期的なケアが欠かせません。
ご自宅でもできる犬と猫の目のケアについて3つ紹介したいと思います。
①濡れたガーゼやコットンを使う
濡れたガーゼやコットンで目の周りの目ヤニや汚れをふいてあげましょう。
被毛に固くこびりついてしまってる場合は、無理にとらずにぬるま湯でコットンやガーゼを濡らして、固まった汚れをふやかしてからとってあげるとよいです。
ティッシュやペーパータオルは繊維が荒いので目を傷つける可能性があるので使わないようにしましょう。
②精製水で洗いながす
目の中に入っている汚れや異物は精製水で綺麗に洗いながす。
目の表面に付着したゴミや毛が原因で不快感から目を掻いてしまい、角膜に傷がつくのを防ぐことができます。
③犬猫用の涙やけシートを使う
犬猫用の涙やけシートで目の周りを優しくふきとってあげる。
市販で売っているものでも大丈夫ですが、使われている成分が目に入っても問題ないかどうか獣医師に確認してから使うと良いです。
犬と猫の目のケアは病気を未然に防いだり病気の早期発見にもつながります。
最初は犬や猫が嫌がることもありますが少しずつ慣れさせていくと協力してくれるようになります。
ご家族のワンちゃんや猫ちゃんの目の異変に気づいたらすぐに病院を受診しましょう。
ノミダニ予防:虫たちへの対策をしよう!
獣医師の福島です。
日差しが照りつける日も多くなり、暑くなってきましたね。暑さ対策と一緒に虫たちへの対策もやってほしい時期。
気温が上がってくると虫たちも活発に行動するようになるので注意が必要です。
今回は特にノミダニ予防についてお話ししていきたいと思います。
予防をしている方も多く、知っているよ!ということも多いと思いますが、今一度確認してもらえると嬉しいです。
ノミダニはどんな虫?
ノミやダニは私達の身近にいて、簡単に家の中にも入ってきます。散歩に出た時にワンちゃんやネコちゃんの体にくっついて、それだけでなく人の服や靴について入ってしまうことも。いつでもチャンスを狙っています。
【ノミについて】
目にすることができるぴょんぴょん飛んで動物に寄生するのは成虫のみ。
この成虫はノミ全体の5%。
残り95%は卵・幼虫・サナギの状態で湿気が多く暗い場所に潜んでいます(家の中だと部屋の隅・ソファー・カーペット。畳など)。
ノミを見つけたら:
潰さないで食器用洗剤を入れた水に沈めてください。
ノミは水に弱いです。
そして動物病院に行ってすぐに駆虫してください。
また、部屋の掃除を徹底的にしてノミ駆除剤を吹きかけましょう。
ノミが寄生すると:
ノミアレルギー性皮膚炎になったり、ノミを飲み込んでしまうと瓜実条虫症(お腹の中の寄生虫)になることがあります。
人も刺すので皮膚炎になったり猫ひっかき病の菌を媒介したりします。
【マダニについて】
クモの仲間で草むらや茂みに潜んでいます。気温が高くなると活発に動き回ります。最近は温暖化の影響で1年中活動しているマダニも少なくないと言われています。
マダニを見つけたら:
マダニには触らないで、動物病院に連れて来てください。
マダニは皮膚の奥まで頭をつっこんで咬みつくので簡単には取れません。
無理に引っ張ると頭だけ残ってしまうことがあります。
マダニが寄生すると:
貧血をおこしたり、ダニが媒介する様々な感染症を起こしたりすることがあります。
人も咬まれると、重症熱性血小板減少症(S F T S)や日本紅斑熱などの怖い病原体に感染することがあります。
【予防薬について】
予防薬を使うことで有効成分が全体に広がり、ノミやマダニが吸血した時にその成分も一緒に吸収され駆虫します。
予防薬をつけてもノミやマダニは着きますがすぐに駆虫されます。
いろいろなタイプがあるので、ご相談ください。
皮膚スポット薬
投薬タイプ(錠剤・クッキー・チュアブル)
一緒に駆虫できるものもあります(予防薬によりバリエーションあり)。
フィラリア・お腹の虫(回虫・瓜実条虫)・ミミダニ・ノミの卵・幼虫・蛹
予防期間:4〜12月頃(1ヶ月毎)
ノミは室内であれば冬の間でも生きられるため1年を通して予防する方が効果的です。
アレルギー体質の子は特に通年での予防をお勧めします。
また、1年中活動しているダニも少なくないと言われているので、屋外の活動が多い場合や自然の多い地域に住んでいる場合は通年での予防をお勧めします。
ノミダニは身近にたくさんいます。
小さいので毛の中に隠れて見つけづらいこともあります。
散歩に行かなくても、私達が家の中に持ち込む可能性もあるんです。
暖かい間は特に活溌に活動するので、予防をしっかりして、楽しく快適な夏を過ごしましょう。
予防にゃ〜
心地良い〜
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療について
脳神経・整形科の診療を担当しております獣医師の宇津木です。
今回は猫伝染性腹膜炎(FIP)の近年の治療についてお話ししたいと思います。
FIPとは腸に感染する弱毒の猫コロナウイルス(FECV)が猫の体内で強毒のFIPウイルス(FIPV)へ突然変異し、このFIPVが単球およびマクロファージに感染・増殖することでFIPを発症します。
FIPは若齢(2歳齢未満)での発症が多く、主な症状として発熱、胸水・腹水の貯留や運動失調、てんかん発作や行動の変化などの神経症状が挙げられます。
これまで長年に渡ってFIPに対する有効なワクチンや治療方法はなく、FIPを発症した猫のほとんどが亡くなってしまいました。
しかし、近年FIPに対する抗ウイルス薬(レムデシビルやGS-441524)が登場し、寛解することが可能になりました。
FIP を発症した猫をレムデシビルとGS-441524 の組み合わせで治療した2023年に発表された論文では、約80%の猫が3ヶ月間の治療期間の終了時点で寛解し、生存していたと報告されています。
ちなみにGS-441524は以前、コピー品がブラックマーケットに流通し高額で取引されていましたが、現在はイギリスやオーストラリアでレムデシビル(注射薬)やGS-441524(経口薬)がFIP治療薬として販売されおり、これらの薬剤を使用した治療プロトコールが国際猫医学会(ISFM)から示されていますので、当院でもこれらを使用してFIPの治療を行っています。
FIPの治療でお困りの猫ちゃんがいらっしゃいましたらご相談下さい。
血尿が出ました。どうしましょう?
こんにちは。消化器・泌尿器科の庄山俊宏です。
泌尿器科には季節に関係なく血尿のわんちゃんやねこちゃんが多く来院します。
人間とは違い、動物は血尿が非常に出やすいです。
原因としてはストレス性の事が多く、ペットホテルやトリミング、入院や遠方への外出時などでストレスが強めにかかるとストレス性膀胱炎になり、血尿や頻尿が出ます。
わんちゃんかねこちゃんかで血尿の原因は少し異なりますが、病気となると細菌性膀胱炎や尿路結石、腫瘍関連(腎臓腫瘍や膀胱腫瘍)、血液疾患など原因は様々です。
レントゲン画像 膀胱結石(矢印)
超音波画像 膀胱腫瘍(矢印)
原因によって治療法は全く異なります。
細菌性膀胱炎であれば薬(抗生剤)の投与、結石の場合は食事療法や手術、腫瘍の場合は抗がん剤や手術となります。
血尿の原因を特定する事は治療方針を考えていく上で非常に重要となり、そのために尿検査や画像検査(レントゲン検査や超音波検査)、状況に応じて血液検査を実施しています。
尿検査は自宅で採取した尿を持参していただくか病院で採取した尿のどちらかで実施します。
ご自宅で採取する際には容器の中に尿を入れて、病院へ持参していただく事になりますが、可能であれば密閉できるプラスチック製の容器に入れる事が望ましいです。必要があれば、病院から採取用容器をお渡しします。
採尿容器
採取から時間が経つと正確な検査結果が反映されない事があります。
採尿から1時間以内に検査するのが理想的ですが、実際には難しい事がほとんどだと思います。
したがって、採尿から来院まで時間がかかりそうな場合は細菌の増殖予防として冷蔵保存していただく事が望ましいです。
レントゲン検査や超音波検査では結石や腫瘍性疾患がないかを確認し、尿検査の結果と併せて総合的に血尿の原因を特定していきます。
血尿は様々な原因で起こり、確率的には低いですが癌が隠れている事もあります。癌に限らず血尿で手術が必要になる病気も多いため血尿が続いた場合は当院へご相談していただければと思います。