2021年5月
脳神経科からお知らせです(電気生理学的検査)
こんにちは。
脳神経科の獣医師の宇津木です。
今回は電気生理学的検査についてご紹介いたします。
神経疾患の診断はMRIによる画像診断とイメージされている方も多いと思います。
MRIは脳や脊髄の形態の異常を検出しており、神経の機能診断はできません(人ではfunctional MRIなどで脳の機能検査も行われているようです)。
神経の機能を客観的に評価するには電気生理学的検査を行います。
電気生理学的検査は生体内で発生する電位の変化を捉える検査で、写真のようなニューロパックという機械を使用して行います。
電気生理学的検査には神経伝導検査(F波検査、運動神経伝導検査、感覚神経伝導検査、反復刺激試験)や筋電図検査などがあり、MRIで異常が検出できない末梢神経の疾患(ニューロパチー)や多発性筋炎といった筋疾患の精査に有用です。
その他、耳が聞こえているか客観的に評価したり、脳幹の機能が評価できる聴性脳幹誘発反応(BAER)といった検査もあります。
MRI検査で異常が見つからない場合でも、電気生理学的検査で異常が見つかることもあり、必要に応じて検査をご提案していきますので該当症例がいましたらご相談下さい。
猫さんの水分摂取量について
皆様、こんにちは。
2021年3月から当院の消化器・泌尿器科を担当させていただくことになりました庄山俊宏(しょうやまとしひろ)と申します。
今回は猫さんの水分摂取量について触れていきたいと思います。
一般的に生物は年齢をかさねるにごとに腎臓の機能が徐々に低下します。
特に猫さんは人間やわんちゃんと比較して飲水量が少なく腎臓の機能が低下しやすい傾向にあります。
腎臓病の予防や治療(悪化を防ぐ事)として、水分摂取量を増やす事は非常に大事なことです。
しかし、人間であれば「水を頑張って飲んで下さい」と言えるのですが、動物の場合水をすすめても飲んでくれない事がほとんどだと思います。
今回は、そんな水を中々飲んでくれない猫さんの水分摂取量を増やす方法をいくつかご紹介したいと思います。
大きく分けて2通りあり、食事中の水分量を増やす方法と飲水量を増加させる方法があります。
食事中の水分量の増加方法
- ゴハンに水やお湯を入れるドライフードに水あるいはお湯を10-20cc足す方法です。器に入れたご飯が浸るよりやや少なめが目安です。ただし、水分を加えると食べない子もいます。その場合は無理せずに少量の水から始めるか、違う方法を試した方がいいかもしれません。
- ウェットフードをあげる
ウェットフードとは缶詰やパウチ、チュールなどの水分含有量が多い食事の総称です。この食事は匂いや嗜好性も良いため好んで食べてくれる子が多いです。ウェットフード単独であげてもいいですし、カリカリに混ぜてもいいと思います。また、おやつとしてあげるのも一つですが、パウチやチュールはあげすぎには注意が必要です。
飲水量を増やす工夫
動物にとって水を飲む環境というのは非常に大事な事です。飲水環境を変化させる事で飲水量を増加させる事ができる可能性があります。
- 水の温度
猫さんは冷水よりぬるま湯を比較的好みます。
- 水の種類
水道水を好む場合やカルキ抜きの水が好きな子もいます。ミネラル水も良いですが、硬水はミネラル成分(カルシウムなど)が多く尿石症になりやすいので、軟水をあげるようにして下さい。
- 器の種類
光の反射が原因でステンレス製の器を嫌がる子もいます。陶器やプラスチック性の器を好む子もいますので色々試してみましょう。また、止まっている水ではなく流水が好きな子もおり、近年は循環式の自動給水機も販売されていますのでうまく活用してみるのも一つです。
- 器の場所
猫さんは静かで薄暗い場所(リビングから離れた2階の寝室や脱衣所など)でゆっくり飲みたい子が多いです。
- 器の数
猫さんの頭数(グループ数)+1個以上が理想です。2頭いるなら3個以上です。
- スポイトなどで飲ます
目的の量を入れられますが、嫌がる子が多いです。嫌がらなければいいですが、無理はしない方が良いでしょう。
今回ご紹介した水分摂取量を増やす方法は、腎臓病や尿路結石の治療で有効とされています。
また、健康な子でも腎臓病や結石の予防として実施していただいても問題ないです。
ちなみに僕の家で生活している2頭の猫さんはお湯をかけたご飯をよく食べてくれていますが、この方法では食べない子も多くいます。
皆様も無理ない範囲で色々と試してみていただけると良いと思います。
また、水分摂取量を増加させるいい方法が他に何かありましたら是非教えていただければと思います。