犬のリンパ腫
犬の体表リンパ節
リンパ球
リンパ球は免疫反応に関与している細胞で、体内への細菌やウイルス等の侵入などを阻止しています。
体の中のいろいろなところに分布しており、リンパ節というリンパ球が集まった組織も形成しています。
リンパ球には複数の種類(T細胞型・B細胞型・それ以外)があり、それぞれ異なった役割を担っています。
リンパ腫
体の中のリンパ球が腫瘍(がん)になってしまったものがリンパ腫です。6~8歳くらいの中高齢に多く発症します。
特徴
リンパ球はもともと全身に分布しており、リンパ腫も全身様々なところに発生します。
発生した場所によっておこる症状が異なり、また、治療への反応や経過が異なることが分かっています。
犬にできるリンパ腫の約80%が体のリンパ節の複数が腫れる多中心型と呼ばれるものです。
皮膚の下にあるリンパ節の腫れに気付いて、ご家族が動物病院を受診されるケースが多いです。
のどにあるリンパ節が腫れると呼吸がしずらくなったり、いびきをかくようになります。
進行すると、肝臓や脾臓・骨髄内へ入り込んでしまい、本来の機能を低下させてしまいます。
無治療の場合の平均余命は1~2ヵ月とされています。
また、肝臓や腸・皮膚・腎臓・胸の中などにリンパ腫が出来る場合もあります。
発生した場所による分類
発生した場所 | 割合 | 良く認められる症状 |
---|---|---|
多中心型 | 80% | 身体のしこり 呼吸困難・いびき 元気消失・食欲低下 |
消化器型(腸にできる) | 5~7% | 嘔吐・下痢 |
縦隔型(胸の中にできる) | 5% | 呼吸困難・食べ物が飲み込みずらい |
皮膚型 | 5%以下 | 皮膚炎のような症状 |
その他 | 5%以下 |
さらに細胞の分化度(成長度合い)によって悪性度の高い低分化型と、比較的悪性度の低い高分化型に分けられます。
検査・診断
リンパ腫の診断は細胞の検査(針吸引検査)でわかります。どこまで病変が広がっているかどうか調べるために肝臓、脾臓などの針吸引検査や骨髄検査を行います。また、他に病気がないかどうかを調べるために色々な検査を行います。
血液検査 | 貧血の有無や内臓の状態などを調べる |
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血液凝固系検査 | きちんと血が止まるかなどを調べる |
レントゲン検査(胸腹部) | 胸やお腹にリンパ腫の広がりや他の病気がないか調べる |
超音波検査(心臓・腹部) | |
尿検査 | 腎臓の状態などを調べる |
肝臓・脾臓針吸引検査 | 肝臓、脾臓に転移が無いか調べる |
骨髄検査 ※麻酔 | 骨髄に転移が無いか調べる |
クローナリティ検査 | リンパ腫のタイプを調べる |
- 骨髄検査は麻酔あるいは軽い鎮静処置が必要です。
肝臓、脾臓の細胞の検査は無麻酔でも可能ですが、状況によって鎮静をかけて行う場合があります。 - 遺伝子検査は針吸引検査で採取したもので行います。
治療
リンパ腫は全身性の病気であり、抗がん剤で治療します。
抗がん剤に非常によく反応してくれることが分かっており、約80%の症例で効果があります。
抗がん治療を行った場合、約半数の犬が1年後も生存しており、約20%の犬が2年後も生存しています。
様々な抗がん剤といくつかの決められたスケジュールがあり、リンパ腫のタイプによって選択します。抗がん剤の副作用として胃腸障害(嘔吐・下痢)、骨髄抑制(免疫力の低下)、脱毛が挙げられます。
出るかどうかは個体差によって左右されることも多いですが、適切なケアを行う事で副作用は最小限に抑える事が可能です。
副作用のために入院が必要となるケースはおおよそ10%以下です。
リンパ腫が抑え込めてスケジュールが終了すれば治療をストップして経過観察をする場合もあります。
再発した場合、再度抗がん治療を開始します