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腫瘍科

「定期けんしん」について

 こんにちは。腫瘍科獣医師の前田です。

今回は「定期けんしん」についてのお話になります。

けんしんって、「検診」と「健診」がありますが、どう違うのでしょうか?

簡単に言うと「検診」は、「ある特定の病気を調べる」ための検査であり、「健診」は「現在の健康状態を調べるための検査。健康診断の略。」だそうです。

ということは、腫瘍科での「定期けんしん」は「がんの有無や進行度合いについて検査するための検査」なので「検診」ということになりますね。

がんを見つけ、手術をして取り除いた後は、基本的には術後の定期検診をおすすめしています。

というのも、がんというのは“悪性腫瘍”のことであり、再発や転移を起こす可能性があるため手術が無事終わったからといって手放しで喜ぶことはできません。

定期検診の内容、間隔、期間についてはがんの種類や悪性度、転移の有無等によって様々です。

多くは2-3か月に1回の頻度、あるいは内服薬で長期的に抗がん剤治療を実施している患者さんでは1か月に1回、という頻度での検診をおすすめしています。

内容は、身体検査、血液検査や超音波検査、X線検査、必要に応じ血圧測定やホルモン測定等も行います。

例えば、リンパ節や内臓(肝臓、脾臓をはじめ原発巣に近い諸臓器等)に転移を生じやすいがんであれば毎回超音波検査を実施したり、肺へ転移しやすいがんであれば胸部X線検査を実施したりします。

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【胸部X線検査で見つかった、肺の転移病変】図1

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【胸部X線検査で見つかった、肺の転移病変】図2

血液検査についてですが、人医療とは違い、動物医療では優れた「がんマーカー」というのは現状ありません。

ですので、私たちが検診の際にチェックしていることというのは、がんが存在することで二次的な異常が生じていないか(例えば、肝臓腫瘍の増大によって肝細胞がダメージを受けて肝酵素値が顕著に上昇する場合等)、抗がん剤治療による副作用(血球減少や肝臓/腎臓の数値異常等)が生じていないか、といったものになります。

もちろん、定期検診は検査内容が多く、費用もそれなりにかかります。例えば血液検査、胸部X線検査、腹部超音波検査を実施した場合は1日で3〜4万円程かかることがあります。

検査の必要性と、実際にご家族や動物にかかる負担(費用面、移動や検査にかかる精神的/身体的負担)を加味し、適正と考える内容でおすすめできるよう努めています。

定期検診で来院されるご家族は、動物さんの体調が安定している時、笑顔で近況をお話してくださります。

ですが、そのような中でも「本当に大丈夫だろうか。再発や転移はしていないだろうか。」と不安な面持ちをしているように感じています。

検査の結果、問題が無いと分かった時は本当に安心したという表情をされています。

がんになった動物さんとそのご家族は再発、転移に不安を抱えつつ過ごすことになるかと思います。

その不安を少しでも和らげられるように、腫瘍科の獣医師としてサポートさせて頂きたいと思います。

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