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脳神経科

猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療について

脳神経・整形科の診療を担当しております獣医師の宇津木です。

今回は猫伝染性腹膜炎(FIP)の近年の治療についてお話ししたいと思います。

FIPとは腸に感染する弱毒の猫コロナウイルス(FECV)が猫の体内で強毒のFIPウイルス(FIPV)へ突然変異し、このFIPVが単球およびマクロファージに感染・増殖することでFIPを発症します。

FIPは若齢(2歳齢未満)での発症が多く、主な症状として発熱、胸水・腹水の貯留や運動失調、てんかん発作や行動の変化などの神経症状が挙げられます。

これまで長年に渡ってFIPに対する有効なワクチンや治療方法はなく、FIPを発症した猫のほとんどが亡くなってしまいました。

しかし、近年FIPに対する抗ウイルス薬(レムデシビルやGS-441524)が登場し、寛解することが可能になりました。

FIP を発症した猫をレムデシビルとGS-441524 の組み合わせで治療した2023年に発表された論文では、約80%の猫が3ヶ月間の治療期間の終了時点で寛解し、生存していたと報告されています。

ちなみにGS-441524は以前、コピー品がブラックマーケットに流通し高額で取引されていましたが、現在はイギリスやオーストラリアでレムデシビル(注射薬)やGS-441524(経口薬)がFIP治療薬として販売されおり、これらの薬剤を使用した治療プロトコールが国際猫医学会(ISFM)から示されていますので、当院でもこれらを使用してFIPの治療を行っています。

FIPの治療でお困りの猫ちゃんがいらっしゃいましたらご相談下さい。

 

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