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画像診断科

レントゲン検査のポジショニングの重要性

こんにちは

画像診断科の石川です。

今回はレントゲン検査のポジショニングの重要性に関してお伝えしたいと思います。

突然ですが、動物はどのようにレントゲンを撮影しているのでしょうか?

当然ながら動物のレントゲン撮影では人の場合とは異なり、こちらの指示に従って寝転がったり、手足を伸ばしてくれたりはしません。

獣医師や動物看護師が適切に“保定”を行い、撮影を実施します。

保定とは力ずくで押さえ込むのではなく、動物の身体の構造、特性などを理解し、動物ヘの負担を最小限にしつつ、動きを制御できるように押さえることを指します。

動物病院では採血や体温測定などの際によく見かけるかもしれません。

X線撮影ではこの保定に加え“ポジショニング”が非常に重要になります。

これは簡単に説明するのであれば、診断のために必要な画像を撮影するために、適切な角度で、適切な引っ張り具合で撮影する、その保定の微調整のことを指します。

実際の撮影では左右対称になるように真っ直ぐ撮影する、息を最大限に吸ったときに撮影する、適切な角度に足を曲げて撮影するなど、撮影目的に応じて様々な工夫を行います。

ポジショニングが悪い画像では病変を見落としたり、誤診することに繋がるため、撮影ポジショニングの精度=診断精度といっても過言ではありません。

また、時間をかけてゆっくり丁寧に撮影することは誰にでもできますが、これでは動物の負担が増えたり、状態が悪い動物の検査では検査中に急変してしまうことに繋がりかねません。我々画像診断医は常にクオリティの高い画像を撮影できるよう日々鍛錬しており、早く、丁寧に、正確な画像撮影・診断を提供できるよう努めています。

実際にポジショニングひとつでどのような違いが見られるのか紹介したいと思います。

ガーガーとひどいいびきで呼吸が苦しい犬の喉のレントゲン画像についてみてみましょう。

このような症状は上気道(鼻や喉)の閉塞(肥満、腫瘍、喉頭麻痺、異物)、炎症など様々な原因で見られるため、鼻から喉の領域にかけて空気の流れを妨げるものがないか確認することがレントゲン撮影の目的となります。

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図1a

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図1b

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図2a

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図2b

 

図1は適切なポジショニングで撮影された画像で、図2は少しローテーションを生じている(頭頚部が少しねじれている)不適切な画像です。

これらはどちらも同じ犬の画像になります。

図1では鼻咽頭道がキレイに見えており(黄色斜線)、空気の通り道に狭窄や閉塞物はないと判断できますが、図2ではこの領域に顎の骨や歯が重なっており、内部の構造がよく観察できません。

また咽頭喉頭部〜喉頭領域にはなにか構造物(緑色)があるように見えてしまいます。

これはポジショニングが悪く、左右対称である構造がずれて、変に重なり合うことでそのように見えているのです。

この画像の違いは、頭と首のねじれが原因ですが、実際には頭の角度はわずか10°程度ずれるだけでこれほど大きな違いになってしまいます。

いかがでしょうか?

当院にご紹介でご来院された際にはX線画像のデータをお持ちであっても再度検査させていただくことがほとんどです。

なかには「かかりつけの動物病院でX線の撮影をして、データも持ってきたのにまた撮影するの?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

・かかりつけ医受診時と病変に進行がないか確認する

・正確な診断を行うためにより高いクオリティでの撮影を行う                                                                                                                  

このような理由から再検査をさせて頂いております。

またこのような撮影技術面だけでなく、機器の性能も非常に重要です。

当院では昨年、X線診断装置を最新のものに入れ替え、より高画質で繊細な画像が得られるようにもなりました。

高品質な機器と磨き上げた技術で病気の早期発見、適切な診断にこれからも尽力してまいります。

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