輸血前のクロスマッチ試験
こんにちは。獣医師の渡邊です。
座古先生に引き続き、血液に関するお話です。
後半は輸血を行う前のクロスマッチ試験に関するお話をします。
前半では、犬にはDEA1.1という血液の型があり、これが(+)と(−)に分類されることをお話ししました。
では、輸血が必要なわんちゃんがいる時に、血液型が合えば、すぐに輸血が可能になるのか。
実は、血液型以外にも交差適合試験(クロスマッチ試験)というものが必要になります。
さて、この話をするには、DEAに関してお話ししなければなりません。
赤血球の表面には、自身が赤血球であることを証明するマーカー(抗原)が複数あります。
そのうち、最も強い抗原抗体反応を起こすものがDEA1.1であり、まずはこれを調べて大まかな分類を行います(血液型分類)。
しかし、いくら抗原抗体反応が比較的弱いとはいえ、他のマーカー(DEA3、DEA4...)は区別しなくても良いのでしょうか?
輸血をするということは、ドナー(血液をくれる子)の血液をレシピエント(血液をもらう子)に入れること、つまり臓器移植と同じです。少し慎重になって考えてみる必要があります。
ここで、交差適合試験(クロスマッチ試験)の登場です。
簡単にいえば、ドナーとレシピエントの血液を混ぜ合わせ、拒絶反応が起きないかを確認しています。
最も重要なのは、レシピエントの免疫が、ドナーの血液を攻撃しないか、ということです。
せっかく入れた血液が、免疫により攻撃され、体内で分解されていくことは、レシピエントの体に負担がかかり、さらに体調を悪化させてしまいます。
つまり、これら2つの検査(血液型の合致、クロスマッチ試験)が問題なければ、そこで初めて輸血が可能となるのです。
これらが合わない場合、輸血を実施することはできません。
そのため、1頭のレシピエントに対して、ドナーの候補が複数必要になります。
当院では大きな手術や血液の病気を抱えている子も多く、輸血が必要になることが多いです。
供血犬としてすでにご登録いただいている子も複数いますが、それでも血液が不足しているのが現状です。
1人でも多くの命を救うために、献血にご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡・ご相談いただければと思います。
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