できものを見つけたとき、病院で針吸引検査を行ってみませんか?
獣医師の平林です。
生れは長野で、入間に住み始めて数年が経ちました。大学時代は青森に住んでいたので、実家にはなかなか帰れませんでしたが、今はちょこちょこ帰っています。
この間、実家の犬と遊んでいたら、からだにしこりがあるのをみつけました。ドキッとして、悪いものだったら…と、心配になりました。
みなさんも日常、動物と触れ合っているなかで、なんだか腫れている、しこりが触れる、と気づかれることはありませんか?
そしてそれから思う事は
・何のできものなのかな
・治療をした方がいいのかな
・どんな治療になるのかな
・治療をすれば治るのかな…
このようなことだと思います。
答えは…
できものの種類によって様々です。
今回は、できものを見つけたとき、このような疑問の答えに近づくためのはじめの検査、針吸引検査についてご紹介します。
針吸引検査は、できものに針を刺して細胞をとり、顕微鏡で観察する検査です。できものの場所や、動物の性格にもよりますが、麻酔は必要にならないことがほとんどです。
細胞の形や様子から、
何のできものか
腫瘍か、腫瘍でないか
良性か、悪性か
診断をします。
できものの性格を知ることができ、
治療の時期、方法を検討するにあたり、大切な判断材料になります。
例えば、この猫ちゃんは耳の付け根に腫れがみられました。針吸引検査を行うとつぶつぶした顆粒をもつ丸い細胞が観察されました。
検査の結果、できものはただの腫れではなく、肥満細胞腫という腫瘍でした。肥満細胞腫は皮膚や内臓にできる悪性腫瘍で、早期の治療が必要です。このねこちゃんはすぐにできものの切除を行いました。
これはねこちゃんのおなかのできものです。2-3年前よりおっぱいの近くにみられていたそうですが、大きくなり、皮膚が破れてきてしまいました。
針吸引検査を行ったところ、乳腺腫瘍が疑われました。乳腺の腫瘍は悪性であるほど、隣の乳腺に広がっていく心配があります。このねこちゃんの乳腺腫瘍は悪性であったため、できものを含めてつながりのある乳腺も一緒にとることをご相談しました。
次はわんちゃんのおしりです。しっぽの右上に硬いできものと、左の太ももにおもちのような形をした柔らかいできものがあります。
針吸引検査を行ったところ、しっぽの右上のできものからは細胞があまりとれませんでした。細胞の結びつきが強く、硬いできものからは細胞がとりにくいため、針吸引検査では診断が難しいことがあります。
このような場合には、組織生検といって、できものの一部を切り取って病理診断を行う検査に進みます。
組織生検を行ったところ、切除をした方がいいがんであることが分かったため、わんちゃんには手術を受けてもらいました。
左の太もものできものは、脂肪腫という良性腫瘍でした。脂肪腫は良性の腫瘍で、急激に大きくなったり、生活の邪魔にならなければ、治療はせずに様子をみることができます。このわんちゃんもこちらのできものは経過をみることになりました。
できものにより治療が様々であること、その際に、針吸引検査が大切な判断材料になることの例を少しですがご紹介してみました。
針吸引検査は、できものの一部しかみていないので、確定診断はできませんが、動物への負担が少なく、できものの情報を引き出す事のできる有用な検査です。
できものを見つけたとき、病院で針吸引検査を行ってみませんか?
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