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神経・筋肉の病気

脳腫瘍

脳腫瘍とは

人間と同様に犬や猫にも脳腫瘍は比較的多く認められるということがMRIなどの画像診断技術の発達や獣医神経科医達の長年の努力とデータ蓄積によって近年明らかになってきました。
 脳腫瘍は多くの場合には高齢の動物が罹患しますが、腫瘍の種類によっては1歳未満、あるいは4-6歳で多く認められるものもありますので、全ての年齢で脳腫瘍という病気は起こり得ると考えられています。また、犬種によって発生率の高い脳腫瘍の種類が異なります。

種類

脳の腫瘍は、脳から発生したもの(=原発性脳腫瘍)と、身体の他の場所に出来たガンが転移した場合(=転移性脳腫瘍)があります。

脳原発性腫瘍

脳腫瘍
脳や脊髄自体は柔らかい組織であり、それ自体が腫瘍化することもありますが、最も多いのは脳や脊髄の周りを覆う髄膜という膜が腫瘍化して髄膜腫と呼ばれる腫瘍となることが犬・猫ともに最も多いことが知られています。髄膜種は脳を表面から押し潰してしまうことが多いです。

一方、脳や脊髄自体がガン化する場合には、脳の中に腫瘍が隠れています。グリア細胞腫と呼ばれるものが多く、これ自体も数種類に分類されます。また、脳内にある脳室から発生する脈絡叢腫や上衣腫なども散見されます。

 転移性腫瘍

身体の様々な部位に出来た腫瘍が転移することが知られていますが、犬で最も多いのは血管肉腫という悪性腫瘍であることが報告されています

症状

脳腫瘍ができた場所によって様々な症状が起こりますが、犬ではてんかん発作が最も多く(45%)認められたと報告されています。一方で猫の場合には、元気がない、食欲がない、何となく様子がおかしい、などの漠然とした症状が多いことが知られています。その他、歩き方がおかしい、身体が曲がってしまう、性格の変化、行動パターンの変化、ゴハンの飲み込みが困難、何処か分からないが全身が痛そう、などの様々な症状が認められます。また、亡くなってしまった後の死後の解剖で脳腫瘍が発見されることも珍しくありません

診断

MRIは脳腫瘍の診断には欠かせないものですが、まずはご家族からお話を伺い、年齢、臨床経過や神経学的検査によって脳腫瘍の疑いがどの程度強いかを判断します。

MRIには全身麻酔が必要となりますので、リスクや疑いの強さなどを総合的に考慮してそれぞれのご家族にとって一番良い方法を一緒に考えていきます。

MRIなど画像診断の進歩は著しいものがありますが、脳腫瘍などの病気をMRIだけで断定、あるいは腫瘍の種類を特定することは経験を積んだ専門医でも難しいということが報告されており、場合によってはもう一歩踏み込んだ検査などのお話をすることがあります

治療法

1.緩和療法

手術や放射線治療などの積極的な治療は行わず、症状の緩和を目的とした治療です。

基本的には毎日の飲み薬を用いた在宅治療となります。

2.放射線治療

特殊な装置を使って、放射線を脳腫瘍に集中的に照射してがん細胞の増殖を食い止めます。
腫瘍の種類によって反応が良い場合と悪い場合があります。放射線治療の治療成績報告の多くは、20回の照射を週5日間、4週間かけて実施したものが採用されており、現在日本国内で実施可能な放射線治療は施設によって照射方法や回数が異なるため、海外(主に北米)からの治療成績報告と比較検討することが難しいのが現状です。

3.外科治療

脳腫瘍の場所と種類によっては手術が可能です。

4.化学療法

抗がん剤は一般的に脳腫瘍にはあまり使われませんが、場合によっては他の治療方法と組み合わせて用いることがあります。

それぞれの動物とご家族のために、これらの治療法の中から最適なものをご相談しながら決定します