全身麻酔について
こんにちは、獣医師の鈴木です。
心なしか夜が少し暖かくなったように感じますが気のせいでしょうか。
さて、今回は全身麻酔についてお話ししたいと思います。
患者の検査や治療の過程で、全身麻酔が必要になる機会は多くあります。
1番分かりやすいのは手術ですね。
全身麻酔をかける上で、必要となる条件があります。
1.意識の消失
2.筋肉の弛緩
3.鎮痛
4.有害反射の抑制
以上の条件が得られた時に全身麻酔と呼べる状態となります。
しかし、これらの作用は1つの薬剤のみではなし得ません。
厳密に言えば、1つの薬でも条件を満たすことが出来ますが、理想的な全身麻酔とは程遠く、寧ろ患者を危険な状態にさせます。
なぜなら、薬には必ず毒性量というものが存在するからです(ここでは分かりやすく毒性量=副作用といたします)。
では、普段どのように全身麻酔をかけているのか?
それは、それぞれの作用を持つ薬を併用することです。
つまり、吸入麻酔薬、筋弛緩薬、鎮痛薬と呼ばれるものです。
それぞれの薬の薬用量を調整し、併用することで、個々の薬に存在する副作用の発現を抑えながら全身麻酔と同じ状態をつくることが出来ます。これをバランス麻酔といいます。
全身麻酔が必要になる時は、このように薬を組み合わせてその患者に適した麻酔を施すように日々考えながら処置しています。
残念ながら、薬に対してよく反応してしまう子や、かなり状態が悪くなってしまっている子など、どうしても麻酔リスクがある状況はあります。
なので、当院ではしっかり麻酔前検査をして何か麻酔に対するリスク因子がないか、もしくは問診等でアレルギーなどがないかを確認しています。
当院には、麻酔を専門とする獣医師がいる為、麻酔前検査で異常がないかを担当医と麻酔科医で吟味し、麻酔科医が麻酔を見る体制が整っていますので、少しでも麻酔に不安がある方のお力になれるかと思います。
最後になりましたが、麻酔にはこうして工夫に工夫を重ねて実施されている背景があることを麻酔が不安なオーナー様方に知っていただければと思います。
実は、バランス麻酔と同様に鎮痛にも数種の薬を併用して工夫を……なんて話はまたの機会にさせていただきたいと思います。
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