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病理診断と免疫染色

こんにちは。病理診断科 技師の密本です。

今回は免疫組織化学染色(免疫染色)についてお話します。

以前、病理診断の基本染色であるヘマトキシリン・エオジン(HE)染色について紹介しましたが、免疫染色はその追加検査として行う染色です。

免疫染色では、抗原抗体反応を利用して細胞がもっている特定のタンパク質の存在を明らかにすることができます。

HE染色は組織全体を紅色あるいは青色に染めわけることで、組織の構造や細胞の形態を評価するのに対し、免疫染色は目的とするタンパク質の有無の評価をする、という点で異なります。当診断科では30種類近くの試薬(抗体)を備え、様々な蛋白を検出しています。

どのような目的で免疫染色が行われるのでしょうか。

大きく3つの目的に分けられます。

・腫瘍の特定:腫瘍細胞の形や増え方(HE標本)だけでは腫瘍の種類が分からない場合

・病原体の検出(パピローマウイルスなど)

・治療方針の決定:リンパ腫のタイプ(T細胞性/B細胞性)を特定したり、腫瘍細胞が治療薬の標的となるタンパク質を発現しているか(膀胱がんのHER2発現検査:これについては少し前のブログで病理診断医の平林先生が紹介しています)を調べたりすることで、治療に用いるお薬や治療方針の決定に活かされます。

・・・ちょっとピンと来ないかもしれません。

では、免疫染色ではどのように細胞が染色されるのか、実際に見てみましょう。

猫の大腸にできた腫瘍です。H E標本でリンパ腫と診断されました。

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この腫瘍の由来がT細胞なのかB細胞なのかを判断するため、T細胞がもつCD3という抗原と、B細胞がもつCD20という抗原に対する抗体を使用して、免疫染色を行いました。

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免疫染色では、陽性細胞を茶色に染めています。

この症例は、腫瘍細胞はCD3に陽性となっていることから、T細胞性リンパ腫と診断され、治療には、このタイプのリンパ腫に最も効果的なお薬が選択されます。

このように免疫染色は診断に利用され、治療方針の決定に活かされます。

免疫染色は学生の頃から何度も行っていますが、この結果次第で診断や治療方針が左右されると思うと、毎回緊張します。

今後も当院の獣医療を陰ながら支えられるように、がんばります!

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